2019-10-05から1日間の記事一覧

篠田節子『冬の光』(文春文庫)

玄人顔負けの腕で洋包丁を研ぎ終えた夫が、「勝手口に立つ妻に呼びかけ、柄の方を向けて手渡す。妻は無言で受け取る。ふっくらした右手で柄を握り、不意に尖った刃先をまっすぐにこちらに向けた。息を呑み、その手先と顔を交互に見る。研ぎ上げた刃先から青…